ロージーの一番長い日(2009年6月・阿蘇カルデラスーパーマラソン100km)

♪白い煙を吹くあの山へ 登ろう登ろう
そこはカルデラ外輪山 走ろう走ろう
阿蘇100kmマラソンを どこまで行けるか
流れる煙は招くよ みんなをみんなを
行こう行こう火の山へ 行こう行こう阿蘇山へ
フニクリフニクラ フニクリフニクラ
誰も走る フニクリフニクラ ♪


2009年6月6日、人生初の、フルマラソン以上の距離を走るウルトラマラソン=「阿蘇カルデラスーパーマラソン大会/100kmの部」に、チャレンジしてきた。
 
阿蘇カルデラスーパーマラソンとは。。。
高低差500mの阿蘇山の周囲を、100kmの前半と後半に上り降りするというタフなコース。初ウルトラデビューにしては、今の走力では時期尚早だったが、とりあえず72.5kmの関門を目標としてエントリーしたのだった。


その根拠とは、、、
過去にトレイルラン(山岳マラソン)の35kmのタイムが、普通のロードの42.195kmに相当する自分にとっては、
今後50km以上のトレイル出走を目指すなら、ロードではおよそ70kmを経験しておかなくてはならない
、、、と思ったからだ。


100kmの部の制限時間は、13時間30分=810分
810分÷100Kmということは・・・平均ペースは1キロあたり8.1分=ぎりぎり1キロ7分台で行かなくては、関門に間に合わないことになる。


という訳で、以下に時間の経緯と共に、この長い長~い1日を振り返ってみたいと思う。
 
・午前4時(スタート前):受付会場に到着。まだ外は暗く、こんな山奥だというのに、大勢のランナーが集まっていた。今年の参加者は1600人位?との話。暗闇の中、シークレットの野外レイヴのようで、なんとなくテンションが上がる。
 
・午前5時(スタート):ランニング仲間とも会って、スタートラインに並ぶ。白い霧が立ちこめ、雨が降って来た。6月とはいえ阿蘇の山中は冷えるので、前半は長袖を着て、中間の50km地点で、半袖の勝負T=エスカルゴTシャツに着替えることにした。
 
・午前6時10分(スタート後1時間10分経過):最初の10km地点の給水所にて、そうめんをいただく。降りしきる雨の中、早朝6時にそうめんに食らいつく人達の姿は、なかなかシュール(笑)
 
・午前7時20分(2時間20分経過):20km地点に差しかかる。そろそろ急な坂が始まる所だ。フルだったらイーブンペースを心がけるべきだが、今回は100kmというので、過去にゴールした経験があるクニさんのアドバイスを元に、作戦を立ててみた。
 
。。。それは、上り坂は全て歩くというものだ。今までマラソン大会では歩いたことが無かったが、ここは後半に向け少しでも足を温存しておかなくてはならない。
 
だが、早歩きとスローなジョギングのタイムがあんまり変わらない、自分の足の特徴?を活かして、秘密兵器の「攻撃的ウォーキング」に打って出ることにした。


つまり、休む為の守りの歩きではなく、あくまで走る代用としての積極的な歩きだ。おかげ様で、走っている時はかなり抜かれたが、上り坂の歩きではゼイゼイ言いながら、何人か抜き返した


・午前9時25分(4時間25分経過):35km地点。フルならそろそろゴールしている時間なので、それを思うとちょっとイヤになる(苦笑) かなり高い所まで来ているようで、6月というのに吐く息が白い。


・午前10時6分(5時間6分経過):42.195km地点に到達。フルの距離がこんなに短く感じたのは、初めての経験


ここからは一転して下り坂。下りは苦手だが、ここでタイムを稼いでおかないと。トレイルのいい練習になりそうな下りが、延々と10kmほど続く


・午前11時5分(6時間5分経過):50kmの中間地点に到着。ここまで1キロあたり7.3分のペースで来てるので、我ながら上出来だ。
 
残り時間は7時間25分もあるし、このまま行けばひょっとしたらゴールも夢ではない?と、ちょっと欲が出る。そうこの時は、残り50kmの後半の恐ろしさにまだ気づいていなかった。。。
 
中間地点で預けていた荷物を受け取り、エイドでそばを食べ、自分の持参のドリンクを飲んだりしてたら腹をこわしてトイレに行き、いつの間にか15分程も経過
 
和式トイレから立ち上がる時、まだ足は残っているようでホッとした(笑)。結局着替える場所も分からず、そのまま後半に向け出発。


この時点で、妹にタイムの速報メールが届いていたらしいが、50kmの部のゴールの予想タイムと勘違いしたらしく、後からトータル100kmのレースの中間地点と知って呆れていた


・午後1時10分(8時間10分経過);中間点でちょっと休んだら復活して、再び走れるようになった。60km地点あたりの私設給水所でビールが振る舞われていたが、ここは我慢して通過する。
 
だが50kmのちょい前あたりから、左肩のこりがヒドくなり、ちょっと腕を動かしても痛みがある。今回は足は大丈夫なのに。。。
普段から左肩はこり易く、長時間になるとやはり身体的に弱い箇所がやられるのかもしれない。
携帯をバックパックの左側前面のポケットに入れていたが、重く感じたので中間点で荷物に戻してしまった。


64.4km地点の関門を、25分位余裕を持って通過。目標の72.5km地点まで、あともうちょい。


・午後2時30分(9時間30分経過):60km半ば過ぎてからは、殆ど走れず、大幅なペースダウンになってしまう。後からコースマップを見たら、60km以降は緩い上りになっていたようだ。


だがこんなに走れないようでは、もはやマラソンとは言えない。。。まるでホノルルを最初から最後まで歩いてゴールする人になったような心境で、なんだか情けなくなる。。。


午前中の雨は上がって、午後は日差しが照りつけ暑さも増して来た。こんなことなら、中間点で半袖Tに着替えとけばよかった
 
関門の72.5km地点を、10分前にやっと通過。ペースは1キロあたり7.86分でぎりぎり7分台。ひとまず、今回の目標はなんとかクリアした
 
・午後4時20分(11時間20分経過):人影もまばらになってきて、お互い抜きつ抜かれつしていた男性と話しながら進む。彼は昨年は50kmの部に出たらしい。
 
ちなみに、50kmの部は100kmの後半と同じで、ハードなコース。出走した女の人達が、キツい!何このコース!!と口々に文句を言ってるのが聞こえた(苦笑)
 
「この先も坂が続くって知ってました?」 あー、クニさんが言ってた所だ。。。「ローさん、せっかく70kmまで行けたなら、もうちょっと先の85kmまで行ってみないと損ですよ~ 山の上で見晴らしがすごくいいから」

コースは牧草地の高原のような上りに入ってゆき、とてもじゃないけど走れそうに無い・・・が時間が無いので、何とか小走りで進む。
 
ぽつりと82.5kmの看板が立っている。選手収容車がウロウロしていて、50kmの部でリタイアする人が手を挙げて乗り込んだ。
 
関門まであと1kmの表示があるが、残りあと4分しかなく、絶体絶命。。。もう止めようか、いや、あの山の上まで登れたら、すごく見晴らしがいいに違いない。
明日は済州島でマラソン大会が開かれるとのことで、私の知人も行くと話してたな~ 山頂からは、ひょっとしたら済州島も見えるかもしれない。
 
84kmの関門に辿り着く。制限時間を10分オーバー。ここまで11時間20分。ペースは1キロあたり8.1分。

スタッフの人が「お疲れさまでした、あちらにバスがありますので」と声をかけてくれた。初めてのリタイア、帽子をとって「ありがとうございました、お世話になりました」と挨拶を返したら、なぜだか涙が出そうになった。

リタイアバスに乗り込み、ゴールまで搬送される。窓から見える景色を眺めたら、相当高い所まで来てたんだなーとあらためて気づいた。バス
阿蘇山は九州地方では霊山とされており、ここまで無事に来れたことを、そこにいるであろう山の神様に感謝した。

。。。こうして、初の100kmマラソン挑戦は84kmで時間切れリタイア、スタートから11時間20分が経過し、ロージーの1番長い日は終わった。。。

目標の72.5kmの関門はクリアしたし、特に前半50kmはトレイルのいい練習になったと思う。変化の多いコースは面白かったし、今の走力からしてこの結果は出来過ぎだ、悔いは無い&燃え尽きてしまった。
歩きが多かったせいか、フルを必死で走った程の、足のダメージもないようだ。

またこの先、100kmマラソンに出るかどうか、今はまだ分からない。ただ、あの84kmの関門の先の、山の頂上には一体どんな風景が広がっているのだろうか?、いつかそれを見てみたい気もする。。。