セレブランナーの休日(2009年5月)

「美ジョガー」というのを、ご存知だろうか?
女性ファッション誌『FRaU』から誕生した美×ジョギングをもじった造語で、おしゃれなウェアを着てスタイリッシュに走る女性達の意味らしい。

 確かに東京マラソン以降、ランニングウェアのバリエーションは格段に増えた。私が4年前に走り始めた頃には、まだランスカなども登場してなかったのだが

2006年青島太平洋マラソン(Before 東京マラソン

2009年かすみがうらマラソン(After 東京マラソン)

かなり変わるもんだ~ 昨今のマラソンブームもあって、ウエア以外にも、iPodなどのラン用グッズの需要も増し、今やランニング業界は大きなマーケットとなっているようだ。

おそらく延岡で初めてランスカを着て、ビアガーデンまで走って行ったというトレンドセッター(笑)の自分としてはこの動向は見逃せず、さっそく『FRaU』をチェックしてみたが。。。
例えば、この雑誌に掲載されている美ジョガーは↓

平野美紀子さん(35歳、化粧品会社勤務)
ラン歴:昨年から走り始め、半年程度
走る距離、時間:週1回、30~50分ほど、ゆっくりしたペースで5~7kmが通常。大会も5kmのみ出場

。。。う~ん。何だか私とは少し違う気がする。。。この「美ジョガー」とは主に、走り始めたばかりのビギナーを指すのかもしれない。

自分はもう、フルマラソンは5回完走し、トレイルランの大会でも入賞した。いつの間にか初心者から、中堅どころ?へと、ポジションが変化しているようだ。
もはやビギナー=「美ジョガー」とは言えない。それならば、何と名乗ればいいのだろうか?!

ここに、甘糟りり子さん著の「シャンパンとスパとランニングシューズ~ホテルジョグノート」という本がある。
その内容は、高級リソートホテルに宿泊し、ホテルの周りをジョグしたり、海外のマラソン大会を走るセレブな女性ジョガーのホテルガイドブックである

。。。そっか、なるほど~ これから目指すべきなのはこういう「セレブランナー」に違いない! 
女性歌手がアイドルでデビューした後、本格派シンガーに脱皮するのと同様に、私も今やビギナージョガーから、セレブランナーにステップアップする時期なのだ。 これはあの、MADONNAや松田聖子も辿った道なのである~

松田聖子が実力派シンガーと認められる契機となった曲「Sweet Memories」
最初このCMには、歌手名のクレジットが無く、また英語の歌詞だった為に、‘誰が歌ってるのか?’とTV局に問い合わせが殺到したという。

さて、セレブランナーとしては、まず何をすればいいのだろうか?! 甘糟さんの著書によれば、高級リゾートホテルに宿泊して走るのが、セレブランナーの証らしい。

ならば、とりあえず県内唯一の高級ホテル「シェラトン・グランデ・オーシャンリゾートホテル」に泊まってみることに。このホテルには国際的なゴルフコースがあり、タイガーウッズも来たというので有名である。


そういや数年前に、このホテルへ、松田聖子のディナーショーに行ったことがあった。クリスマスディナーショーにもかかわらず、カップルは殆ど見かけず、聖子と同世代の中高年の女性客で異様に盛り上がっていたが(笑)。この時は泊まらなかったので、宿泊するのは実は今回が初めてだ。

さっそく定額給付金+夜勤のギャラをはたいて、ホテルを予約してみた。だがただ行って泊まるだけでは単なるセレブで、ランナーとは言えない。そうだ!ランナーらしく、家からホテルまで走ればいいのだ!

。。。こうしてシェラトンホテル近くの佐土原駅をゴールとし、週末の日曜日、セレブランナーの65kmに渡るジョグの旅を敢行する事にした。荷物は前もって送り出し、長丁場と日差しに備えトレイル用のウェアと、バックパックに万が一に備えて保険証を入れて、午前7時半に家を出る。

 

セレブランナーの心得その1:美ジョガーはファッション第一だが、セレブランナーはその経験から機能性を重視した装備に身を固める。ランスカやランドレスは長時間のランには向かない。よってガテン系の山用ウエアとなる^^;

 

今までフルの42.195kmの距離以上より先へ行ったことにない自分にとって、65kmというのは未知の領域だったのだが。。。延岡~佐土原に至るその行程は、次の通りであった。

22km地点:お舟出の湯@日向で、ソフトクリームのエイド(給水所)。日差しも強くなってきたし、ここでビール飲んで温泉入ってとっとと帰りたい気もしたが、着替えや荷物はホテルに送ってしまって、手元にはないので断念^^;

35km地点:都農ワイナリー付近を通過。3年前に初フルに備えて、ここまで来たことがあったが、運悪くレストランは閉店していてワインは飲めなかった上に、膝をブッ壊して痛い目に↓

遥かなる都濃ワイナリー

今回この地点を超えることにより、そのトラウマをようやく克服することが出来た(苦笑)

 

40km地点:川南に到着。空模様があやしくなり、ついに雨が降り出す。向かい風も強くなったため、雨宿りしたりコンビニエイドを廻りながら、やっと進む。。。

50km地点:高鍋の小丸新茶屋前。このお店はあの今井美樹が、高校時代によく立ち寄ってたらしい。彼女は陸上部で、ハードルとリレーでインターハイ出場したことがあるとのこと。

もうここで、うどんとビールを飲んでJRで引き返したい気もしたが、ホテルのキャンセル料がもったいないので、諦める^^;

55km地点:相変わらず向かい風が強く、国道沿いは吹きっさらしで、まるで台風のようだ><。砂ぼこりが舞い上がったり、時折小雨が降る。


もうほとんど走れないが、てくてくと歩く。。。セレブなホテルまであと少しと自分に言いきかながら^^;

65km地点:午後5時半、スタート後ジャスト10時間で、ようやく佐土原駅に到着。ここからタクシーで、10分ほど離れた海沿いのホテルへと移動。

★セレブランナーの心得その2:最後はタクシーに乗ってしまったが、佐土原までの65kmを自分の足でやってきたというのは、CO2の大幅削減に繋がるのではないか? そうセレブランナーは、ECOの意識が高いのである。

。。。ホテルの入り口に着いて、ハタと気づいた。この道中で、顔は日焼けで真っ赤っか、髪は強風でボサボサ、全身が塩でザラついている。。。セレブどころかバックパックを背負った、浮浪者のようだ。。。


こんな恰好で、高級リゾートホテルに入れてくれるのだろうか?!と不安になる。しかしそこはセレブランナー?、無事にチェックインに成功する。


さっそく着替えてレストランに直行したが、生ビールのメニューがアサヒしかない!居酒屋じゃないんだから、高級ホテルのくせに、エビスくらい置かんかい! これじゃあ、ファミレスJOYFULのサントリープレミアムモルツの方が、マシじゃー!

★セレブランナーの心得その3:セレブランナーはワインのみならず、ビールの種類にもこだわる。麦芽100%でないと、ビールとは認めない。


ホテルの中には温泉があり、露天風呂で月明かりに揺れる松林を眺めながら、優雅にメディテーション。。。いい気分(温泉)しようとしたら、睡魔に襲われあやうく溺死しそうになる^^;

ここでは浴衣と下駄の貸し出しのサービスがあり、これを着用すればホテル内の何処へでも行けるらしい。さっそく部屋に戻って着替えて、ホテルのバーにでも繰り出そうかと思ったが。。。


素足になって下駄を履いたら、両足の親指の爪が死んで黒ずんでるのに気づく! 人差し指の爪も剥がれてしまってるし。ごまかそうにも、マニキュアも何も持って来ていない。。。


しかし結局、それまでの疲れがどっときたのか、部屋から一歩も出れずに、いつのまにか羽毛のセミダブルベッドの上に、浴衣姿のまま行き倒れてしまい、セレブなホテルステイの夜は更けていった。。。

翌朝、バイキングを平らげ、チェックアウトの為に部屋を出ようとしたら、テーブルの上にパンフレットのようなものを見つけたので、2つ折にしてポケットに入れた。

朝イチのJRに乗り、職場へと向かう。窓から国道を眺めながら、よくぞこの行程を自分の足で辿ったものだと我ながらつくづく感心する。しかし旅行気分もここまで、セレブランナーのつかの間の休日は終わり、また忙しい一週間がスタートするのだ。


★セレブランナーの心得その4:セレブランナーは多忙であっても、仕事とランの両立に留意する。

車掌さんが切符の確認に来たので、ポケットに手を入れると、さっきのパンフレットがあった。広げてみるとそれは、ホテル周辺のジョギングコースの案内マップだった。ふ~ん、こういうコースがあったのか~

ここで気づいた! もしかしたら、、、セレブランナーとは
「高級リゾートホテルに泊まって、その周りをジョギングする人」であって、
「高級リゾートホテルまで、わざわざ走って泊まりに行く人」では無いのでは?!

ガガーン!げっそり 65kmを10時間もかかって、ラン&ウォークしたダメージによって、全身を筋肉痛に襲われながら、これからまた一週間仕事をしなくてはならない。。。自分の勘違いとキビシい現実を突きつけられて、ブルーマンデーな気分で列車に揺られてゆく、セレブな休日明けの月曜の朝であった。。。

奇しくもこの日、BLUE MONDAY=5月18日は、故イアン・カーティスの命日でした。黙祷。